ヘルスケア研究部ニュース&トピックス

2012年04月27日

介護職員によるたんの吸引等の試行事業の研修のあり方に関する調査研究報告

平成23年度の厚生労働省老人保健事業推進費等補助事業として、弊社が実施した「介護職員によるたんの吸引等の試行事業の研修のあり方に関する調査研究事業」について、概要をご報告するとともに、報告書を公開します。
報告書のダウンロードは、最下部のリンクをクリックしてください。

調査研究名:介護職員によるたんの吸引等の試行事業の研修のあり方に関する調査研究事業

(平成23年度 老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進事業)

【概要】

本調査研究では、「介護職員によるたんの吸引等の試行事業(不特定多数の者対象)」(以下、「試行事業」と記す。)の進捗に合わせて、試行事業の運営支援を行うとともに、試行事業の実施状況の記録、試行事業における介護職員の実施ケアの評価データの収集・分析、参加関係者へのアンケート調査の実施・分析を行った。また、委員会を設置して、試行事業の各段階の評価方法・基準の妥当性・適切性について、「介護職員によるたんの吸引等の試行事業における研修の評価委員会」(以下、「本委員会」と記す。)を開催し検討を行い、介護職員の研修内容と評価のあり方についてのとりまとめを行った。
なお、本調査研究及び委員会での検討内容・とりまとめ結果については、「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」(以下「検討会」という。)に、試行事業の実施結果として提出・報告されている。
また、試行事業終了後には、参加講師・指導看護師、並びに介護職員に対し修了証書の発行・配布を行った。

【事業の結果及び評価】

2年間の試行事業の実施結果、参加関係者のアンケート結果、並びに、本委員会での討議結果を受けて、以下の事業結果をとりまとめた。

(1) 指導者講習について
①講習時間の追加拡大
指導者講習の時間について、追加が必要であるとの意見が多かったことから、全体的な時間を追加する方向で見直してはどうか。
②指導内容・指導方法の充実
介護職員の研修で講師・指導者となる医師、看護師の中には、教育・指導の経験のない方も含まれることから、「指導者講習」での指導方法や内容について充実させてはどうか。
③ヒヤリハット・アクシデント報告に関する指導の徹底
ケアの安全性確保の観点から、ヒヤリハット報告の意義や報告の実際について、指導者講習での指導内容を充実させてはどうか。

(2) 基本研修の評価方法について
①基本研修における知識・技術習得の評価基準・評価方法の妥当性
基本研修(講義)について筆記試験により知識の習得を確認し、基本研修(演習)についてケアのプロセス評価により技術の習得を確認した。ケアの試行までの実施状況から、これらの評価方法については、概ね妥当である。

(3) 実地研修の評価方法について
①実地研修におけるケア技術習得の評価基準・評価方法の妥当性
実地研修についてケアのプロセス評価により技術の習得を確認した。ケアの試行までの実施状況から、評価方法については、概ね妥当である。

(4) ケアの実施体制について
①実施体制構築のための関係者の積極的関与の促進
施設・事業所の体制構築について、施設長・事業所長、医師、看護師等の関係職種のそれぞれの役割に応じた関与を促す必要があるのではないか。
②在宅の利用者を対象とする連携体制の強化・促進
在宅においては、施設に比べ連携が多方面に渡ること等から、その特殊性を考慮した連携体制を検討する必要があるのではないか。
③ヒヤリハット・アクシデント報告書の作成、報告実施の指導強化
ヒヤリハット等の報告については、必要な場合に適切に報告がなされるよう、具体的な報告例を示す等の対応が必要ではないか。
なお、本委員会での討議・検討内容については、平成23年度介護職員等によるたんの吸引等の実施のための研修事業の「実施要綱」ならびに「筆記試験事務規程」に盛り込まれ、平成23年11月以降に実施された都道府県等の研修事業に実施・展開に活かされている。

【今後の課題、展開】

試行事業の実施・取り組み結果、並びに検討会での議論等を踏まえたうえで、「社会福祉士及び介護福祉士法」(昭和62年法律第30号)の一部改正がなされ、平成24年4月からは、介護福祉士及び一定の研修を受けた介護職員等においては、医療や看護との連携による安全確保が図られていること等、一定の条件の下で『たんの吸引等』の行為を実施できることとなった。また、都道府県等では、平成23年11月より、介護職員等によるたんの吸引等の実施のための研修事業が実施・展開され、たんの吸引等のケア実施が可能な介護職員、並びにその指導にあたる講師・指導看護師の養成が進んでいる。

 本調査研究とは別事業とはなるが、弊社においては、都道府県等による研修事業開始に先行する平成23年10月に、都道府県等で指導にあたる講師・指導看護師養成のための「指導者講習」を東京・大阪の2会場で開催し、462名の修了認定を行ったところである。
なお、この指導者講習では、本調査研究の討議結果を踏まえ、講習時間の4時間拡大、講習内容の見直し(吸引・経管栄養・AEDの各シミュレーター機材、吸引器・人工呼吸装置などの実際の医療器具・機材の操作によるロールプレイング研修の導入、ヒヤリハット・アクシデント報告の指導充実など)を行っている。

介護職員等によるたんの吸引等の実施のための研修事業の本格展開に当たり、今後については、以下の点が課題になると考えている。

1.必要となるケア実施可能な介護職員、並びにその指導者の早期養成
全国の施設や居宅で、介護職員によるたんの吸引等のケア実施を待ち望んでいる利用者は多い。一方、都道府県等の研修事業はまだ開始したばかりで、充分な数の介護職員、指導者が養成された状態にあるとは言えない。特に、指導者(講師・指導看護師)の確保・養成は喫緊の課題と言えるだろう。

2.介護職員による安全なケア実施、実施環境や実施体制の整備・構築
今後、たんの吸引等のケアを行う介護職員は急速に増加することが予想されるが、何よりも事故があってはならない。介護職員による安心・安全なケア提供を実現するためには、施設・事業所の責任者、医師、看護師の関係職種の全員が、それぞれの立場・役割のもとで、より積極的に関与をすることが求められる。また、それを促す仕組みや外部からの働きかけも必要であると思われる。

3.介護職員のケア技術の維持・向上
ケア技術は、一定の頻度で定期的に繰り返し実施されることで維持・向上が図れると考えられるが、修了認定を受けた介護職員の中には、本人異動や対象者の不在により、必要充分な環境が伴わない場合も想定される。また、日進月歩で進むケア技術や医療機材・器具の最新情報について知る機会も含め、再研修、フォローアップ研修の場も今後は必要となると思われる。

【報告書】

平成23年度報告書

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