【2011年度第3号】それでもコンプライアンスと言うためのJMARマガジン -電力会社やらせメール事件-

不祥事の痛いトコロ -電力会社やらせメール事件-

企業不祥事の第三者調査報告は、社会的には騒動の収まったタイミングでひっそりと出される場合がありますが、今回ほど、その報告が待たれた報告書も珍しいでしょう。マスコミは、県知事の動員要請があったかどうか、に主として着目しており、この点は今回の報告書でも多くの調査と分析が割かれています。
※ちなみに7月に出された電力会社の社内調査報告書に「知事」は全く登場しません。

私は、県知事からのプレッシャーがあったにせよ、電力会社が社会から厳しい目が注がれている情勢で、どのように安易な不祥事が実行されてしまったのかに、注目しています。変な言い方ですが、「知事、今回ばかりはまずいですよ。」と進言する役職員はどうしていなかったのか、気になるのです。

しかしながら報告書では、知事と副社長、支店長らの面談の様子から、本部長、部長へと徐々に指示が具体化されていくくだりが、詳細に掘り起こされているものの、なぜ誰も疑問に思わずパスを連携していくのか、読んでもよく見えてきません。

今回の発覚の発端となった市民のブログ記事の記述を拾ってみます。『今日は、小学校の親子ドッジボール大会。(中略)同じチームのある九電の関係者から、「実はコンプラ違反のようなことを九電あげてしているよ」との愚痴がこぼれてきた。』

このグループ会社社員は、上層部の人々よりも、機敏に問題を察知しているのです。(しかし、この社員が社内に「これはまずいです」と内部通報をしたとして、果たして会社は動いただろうか。疑問です。)

ある哲学者は、原因と結果のつながりに囚われている限り、正しい倫理的態度はとれないといっています。「誰かが言うから私はそう行動した」、「世の中はそういうものだから、私は従った」。確かに、他人に言われて行動した結果が積み重なって、世の中が現在の姿になっているのも事実です。

ですが、その哲学者は誰しも考えてしまう因果に囚われず、判断することが倫理である、といいました。現場社員の正直な気持ちを活かすことができない企業風土が問題なのか、それとも企業のために昇進していく幹部社員に「自ら考える」ことを捨てさせている評価や教育のシステムが問題なのか。

「会社を愛し、原子力を愛し・・・」そうする以外に社員の成長がありえない企業なのだとすれば、コンプライアンスの取組など無意味です。冒頭のどうして安易な不祥事が実行されたか、という問を逆にしてみましょう。

企業とともに成長していく幹部社員に「社会常識や倫理観」を維持させるのは、易しいようで、難しいことなのではないか。
また実は「常識」などという生やさしいものでは不祥事をとめることはできず、強靭な信条や会社を突き放して考えられるほどの個性に立脚したリーダーだけが、知事や経営者から言われたから、という因果に囚われず、今回のような不祥事を防げるのではないか。

振返って、現在多くの企業が行っている経営者向けコンプライアンス研修に「あなたの常識や倫理観は本当にそれに値するか」と問うほどの迫力があるのでしょうか。分かりやすい不祥事であるがゆえに、原因は人間や組織そのものになるのでしょう。私も、いろんなことを考えました。

(宮川準)

よんたくんに挑戦 -防災編-

よんたくん」は弊社提供の、短時間で取り組むための「四択(よんたく)」のコンプライアンスeラーニングです。主人公のよんたくんが様々な職場の問題に遭遇します。

★前回の問題と解答★(今回は出題はありません)

前回号の問題に、解答を寄せていただいた皆様ありがとうございました。
みなさんの回答、意見が分かれました。私たちも解答作成に悩みました。

【問題】

Q.震災後、社員の安否確認に手間取った経験から、よんたくんの会社では社員の自宅や個人のメールアドレスを含む名簿を作成し始めました。よんたくんは、母親の携帯電話まで書き込みましたが、ふたこさんは自宅のメールアドレスを出すことに不安を感じています。さて、日ごろ、この名簿を誰が保管しているのが望ましいでしょう。

【選択肢】

A.社長のみ
B.総務部長のみ
C.各部署の課長クラス
D.全社員

【解答】


※選択肢を、部門長クラス に改めたいと思います。

【解説】

震災時に、総務部長や防災責任者が不在にしている場合、万が一のことがあった場合など、必ずしも社内で陣頭指揮が取れるとは限りません。危機管理にあたって、さまざまな判断を現場で進めていく必要がありますが、安否確認についても、本社の責任者一人が情報を抱えているのではうまく行かないこともあります。

安否確認用の名簿は、社員の承諾を得て、会社以外の自宅や個人の連絡先を収集する必要があります。そして、各部門長など現場のリーダーが責任を持って「災害時のみ」の前提で管理するのです。

しかし、こうした名簿を持たされる方の管理者も不安に思うでしょう。万が一なくしてはいけませんし、手帳にはさんでおくのか、パソコンにファイルで持っておくのか、所持の方法も問題です。個人情報取扱いの注意点を、確認した上で、いざという際に取り出せ、かつ安全な管理方法を検討しましょう。

そして、年に一度は連絡先が変わっていないか確認し、管理者には、どう所持しているか、チェックしておくことがよいでしょう。

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編集後記

いよいよ10月ですね。内定式を終えたと思しき学生達とたくさんすれ違いました。新鮮な目を持つ彼らから見た、"おかしい""変だ"という指摘を受け入れる度量を持たねば、と今回のコラムを読んで感じています。同時に、彼らに対して、"習慣""なんとなく"という言葉を使って説明しないように気をつけよう!と心を新たにしています。