日本能率協会総合研究所 マネジメント&マーケティング研究事業本部

コラム
取締役会の実効性向上のマネジメント構築③
取締役会事務局の人材育成
~他社取締役会事務局との情報交換の場を持つ~

2021.06.30

岡崎 裕

一般社団法人日本能率協会において、役員研修及び経営者候補の選抜研修などに長年携わる。研修で培った多くの企業役員とのつながりを活かし、実効性評価等の調査業務に従事。2018年より現職。

<ポイント>
  • 取締役会事務局は、業務量が増え、仕事の難易度もあがっている。
  • 取締役会事務局スタッフ育成の必要性は感じているものの、必要とされるスキルの整理や育成の仕組みが追い付いていない。
  • 他社の取締役会事務局との定期的な情報交換の場を持つことが、育成にとって有効な手段の一つと考えられる。

1.取締役会事務局の業務量は増え、仕事の難易度も上がっている。

日本能率協会総合研究所が 2020年9月に実施した調査1では、取締役会の業務量は増加し、かつ仕事の難易度も上がっていると感じている企業は約半数となっている。【図表-1】

【図表-1】取締役会事務局の「業務量が増えている」×「難易度が上がっている」(n=300)

1 本コラムで掲載の図表の出典:日本能率協会総合研究所 「取締役会及び取締役会事務局の実態に関する調査2020」
有効回答数300社(調査対象:東証1部・2部上場 2610 社の取締役会事務局)

その理由を「業務量増加」・「仕事の難易度向上」それぞれで尋ねたところ、「①コーポレートガバナンスへの対応」「②取締役会の実効性評価に関する業務」「③取締役会の議論自体の深化にともなう要求される資料レベルの高度化」の3項目がともに 30%を超えており、中でも、「コーポレートガバナンスへの対応」は群を抜いて多い。【図表-2・3】

たしかに、コーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」と表記)が適用されて以来、上記3項目は目に見えて変化してきた内容であり、今の取締役会事務局には次々と課題が降りかかってきている。しかし裏返せば、従来と比較して、取締役会事務局がそれだけ重要なポジションになったという認識を持つべきであると考えられる。

【図表-2】取締役会事務局の業務量が増えている理由(3つまで選択可)(n=184))

【図表-3】取締役会事務局の仕事の難易度が上がっている理由(3つまで選択可)(n=186)

2.取締役会スタッフ育成の必要性は感じているが、実行はできていないのが現実。

上記のような状況を背景に、仕事の質・量ともに高度化していると認識されている取締役会事務局にとっては、スタッフの育成は喫緊の課題となる。実際、同調査の結果を見ても、「取締役会事務局スタッフを意図的に育成する必要性を感じるか」という問いに対し、6割を超える企業が「必要性を感じる」と回答している。【図表-4】

しかしながら、育成の必要性を感じると回答した企業であっても、6割超の企業で「スタッフを育成する仕組みはなく」【図表-5】 、約5割の企業で「人材のスキルをこれから整理したい」【図表-6】という状況である。

重要なポジションだからこそ、意図的に人材を育成していかねばと思いながらも、その仕組みは十分に構築されていないというギャップを見て取ることができる。

3.他社の取締役会事務局との定期的な意見交換の場を持つ。

前項で見たとおり、取締役会事務局スタッフを育成する仕組みはまだ十分に整っていない企業が多い。かといって、仕組みが整うまで待っている訳にもいかない。社内で追い立てられるように仕事を回しているだけでは、取締役会から期待されるような人材をつくりあげていくことは難しい。社内に埋もれず、社外との接点を意図的につくることは非常に重要なポイントである。

社外から実務的な情報を獲得する最も良い方法は、「他社の人と話をすること」に尽きる。雑誌などの媒体を通じて、ある程度は他社の情報を収集することができるかもしれないが、やはり実体験をもとに口頭で伝わってくる内容は、十分に行間を埋めてくれる。

実際、弊社でも2019年度に取締役会事務局研究会という会合を半年ほど実施したことがある。東証1部上場の大企業12社の方々に参加いただき、固定メンバーで6回の意見交換を実施した。コーポレートガバナンスの面では先駆的な企業をゲスト講師として招く一方で、参加企業同士で自社の取締役会について語り合うという設定だ。自社の取締役会についても説明する必要があるので、ただ何となく参加するということはできない。一定の緊張感のある場の中で、お互いが学びあうことができた。この弊社の取り組みは、半年間という限られた場ではあったが、終了後も現在に至るまで、折に触れて参加者同士の情報交換が行われている。

良質な人的ネットワークを築くとともに、自身の実務的なレベルアップも図られていくという点で、他社の取締役会事務局との定期的な情報交換の場を持ちつづけることは、スタッフ育成にとって一つ有効な手段と考えられる。

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