全日本空輸株式会社(以下ANA)における『ANA’s Way Survey』は、「ANA’s Way」という行動指針を軸に、ANAグループ社員が捉える風土や文化、環境の意識を可視化し、その結果をPDCAに乗せて改善に結びつける目的があります。
初回となる2002年当初も、研修やコンサルティング業務でお付き合いはあったと思いますが、定点観測となる社員満足度調査を導入する際に、各社のお話を聞いた中で、当社の約34,000名の社員数、海外部署を含めるとユニットといわれるひとつひとつの従業員の集まりが1000以上あるこの規模感で、企画・実施・分析・評価・フィードバックという一連のサイクルを、毎年10ヶ月程度かけて不具合なく安定して実施できる調査の安定感。それを不安なくお任せできるところが基本的には他にないと思っています。
ありがとうございます。
2014年に『ANA’s Way Survey』として「ANA’s Way」という行動指針と、様々な調査・取り込みを統合していくという大きな変更がありました。調査規模もさることながら、毎年取り組んでいく中で、同じ調査を繰り返すだけではなく、こういう悩みがあるとか、こういうことを入れたいんだけどという相談に、様々なノウハウと経験でアドバイスを頂きながら、最適化することができる。そのあたりのパートナーとしての信頼関係や安心感は、日本能率協会総合研究所さんでないと難しいと思っています。たくさんの他社の皆様との取り組みも持たれているので、お話したときにすっと引き出しを開けて教えてくださるのは、我々にとってすごくありがたいですね。あまりにもゼロから一緒に作りましょうというのは困ってしまいますので。
効率化という大きな目的で、人事部の「社員満足度調査」、安全推進部署の「安全文化評価アンケート」、総務部の「CSRアンケート」を統合しました。3つバラバラのアンケートを受けなければならないという社員の負担感を解消し、異なる表現ではあるけれど内容が重複する調査項目があるなど、それらをひとつにできたことはすごく良かったと思います。また、事務局ごとに時期が重ならないように調整していた調査を一緒にして、翌年の組織運営や戦略策定に反映しやすい9月に実施できるようになりましたので、事務局全体の効率も上がったと思います。
また、『ANA’s Way Survey』以上の規模で行う調査は会社の中にないので、啓発という意味で、ANA’S Wayの存在意識する機会にもなっていると思います。会社の考え方や哲学がこの調査に集約されているというのは象徴的で、安全やCSRに関することまですべて器の中に収まっているというのは大きなインパクト、大きな意味があったんではないかと思います。
1番大事なのは、現場・部署で使えるということだと思ってます。部署のニーズに足るようなカルテ(部署別結果)・分析結果を出して、それをフィードバックしていくことが、この取り組みの中心にすべきものだと思います。そのために、毎年いろいろな要望を聞き、課題を改善しながら、今に至ります。
また、部署が中心にありながら、ANAグループ45社の個社単位のデータを、各社の中でマネジメント活用してもらうための分析もしています。個社単位で動向を見る監査や人事にとって、各社員の職場の感情はどうかというのがすごく大事、それから、組合窓口や労働条件の取り決めなどを行う労政部がどのように運営されているのかを把握するのにも活用しています。
もっと大きい目で見ると、グループ全体というところがあります。経営層は、社員が、風土や文化、職場に満足しているかにアンテナをはっています。生産性を上げながら良い仕事をしてもらうために大事な職場環境、個人の感情を見てもらうために情報を共有し、我々がグループ全体を改革するために、今年度はどういう分析・方針で調査を実施するという報告をするようにしています。
もうひとつは、グループ運営に近いところで、情緒的な風土改革だけではなく、項目の一部は業績評価指標(以下KPI)になっています。ホールディングスが個社を様々な観点で評価していくのですが、評価項目のひとつに、こういう調査のいくつかの設問に特に着目していて、その上がり下がりを個社の1年間のマネジメント評価にしています。
項目がKPIであることを強調すると回答に影響すると思いますが、気をつけられていますか?
風土であっても確実に進めるためには指標を持つべきだという結論が現時点ではベターだと判断しました。それで経年の動きを追っていけますし成績に重ねることが出来ますので、個社のマネジメント層が、指標を向上させようと前向きに対策することにつながっているのかなと思います。
経営層からも、各現場の部署からも好反応でした。負担が軽減したとか、わかりやすくなったとか、「ANA’s Way」の啓発につながっているのだと思います。
ホールディングスになればなるほど、風土に対して触れる機会が多くなってきていて、こういう調査を実施する際にきちんと説明するであるとか、今回のスコアがこうなったとか、気にする機会が増えてきているんですね。経営層や個社のマネジメント層など、調査結果を気にするトップがいると、職場が意識することに直結するじゃないですか。だから、意識される局面とか存在感というのは、高まってきているんじゃないかなと思っています。
そのひとつの表れとして、事前に問い合わせを頂いたりとか、今年の調査について説明会をやりますというときに参加が来たり、こういう風にアレンジできませんかとか、うちの部署の事情はこうなんですけどこういうことはできますかねとか、推進部署の中では今の事務局以外の部署からこういうことを入れてくれということが結構増えてきてますね。設問を増やすのは大変ですが、言ってきたものに対してはなんとか応えられるようにしています。
長年定点観測的に、健康診断的に見てる部分、KPIとしてやってる部分は変わらずにそのまま維持していくものだと思うのですが、今後の展望として、こういう風に活用していきたいとか、健康診断以外にもこういうところを狙っていきたいとか、そういうご希望とかをお聞かせ願いますか。
健康診断という機能は必要なんですね。そのために始まったということを大事にしていきたいと思っていることと、そういいながら、健康診断をしっかり活用できているのかというとまだまだなんだろうなと思っています。
活用している部署は増えてきて『調査のフィードバックがきちんとされていますか?』や『ANA’s Way surveyによってESが高まっていますか?』というような項目の社員の回答状況がよくなってきてまして、取り組みが進んでいる部署が増える一方で逆に全然進んでいないところがはっきり浮き彫りになってきているという状況です。このへんはなんとかしたいなという思いはあります。いくつかの部署で試験的でもいいので、社内コンサル的に我々が入っていって、一緒にマネジメントの悩みを聞いて、解決策を考えたりとか、アドバイスしたりとか、そのような動きもできないのかなと思ったりしています。
それから、KPIですが、今のところ不具合が出ていないものの、やはりこれが1番いいカタチだとは思っていなくて、もうすこしKPI化できるものを考えられないかなという認識を常に持っています。実現したいこととして、「ANA’s Way」自体はリリースをしてから今3年目なんですが、これまでは認知や共感に軸足を置いた全体の活動になっていましたし、我々が見ていくところもそこが中心でしたが、今後は行動化とか実践化に全体が移っていきます。いくつかの部署は、そういうところを意識して活動を始めてくれているところもあり、私たちも調査として見ていくポイントをすこしずつ移していく時期なのかなと思っています。そういうものから、創発だとか挑戦が生まれる兆しがあるなということを見ていけるような、双方を補完できるような動きになっていければいいなと思っています。
社名 | 全日本空輸株式会社 |
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発足 | 2012年(平成24年)4月2日 |
資本金 | 25,000百万円 |
従業員数 | 12,360名(2015年3月31日現在) |
主な事業内容 |
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インタビューご回答者:人事戦略室人事部 ANA’s Way推進チームリーダー 荒木知哉様
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