病院経営の課題を読み解く
~第15回 病院の経営課題等に関する調査から

2022.12.20

日本能率協会総合研究所は、2004年度から継続的に日本大学商学部の髙橋淑郎特任教授と共同で、全国の病院を対象に「病院の経営課題等に関するアンケート調査」を実施しています。

直近では、第15回目の調査を2021年度(2021年11月~2022年2月にかけて)に実施しました(全国8,198病院に郵送で配布し、回収515件(回収率6.3%))。このアンケート調査結果を踏まえ、コンサルタントとしての視点を織り交ぜながら、現在の病院経営を取り巻く状況とその対応を読み解くコラムを連載します。今回はその第1回目となります。

厳しさに直面する病院経営 ~では10年後の経営状態は?

病院経営の厳しさが叫ばれて久しいですが、今回の調査結果では、赤字に陥っている病院は、全体の1/3(33.0%)に上りました。

赤字病院の多さは、憂慮すべきことであるのは間違いありません。とはいうものの、現在の病院の経営状況は、将来の経営状況を予見するのに十分なものなのでしょうか。そこで今回の調査では、「将来(10年後)」の経営状態が今よりも良くなっているか否かも尋ねてみました。その結果、現在赤字の病院では、10年後の経営状態が「良くない」と考えている病院が半分(50.6%)程度あったものの、10年後の経営状態が「良い」と考えているところも3割(31.2%)程度ありました。一方、現在黒字の病院についてみると、10年後の経営状態をみると、「良い」と考えているところは4割を上回る程度(44.5%)ですが、「良くない」と考えている病院も4割近く(38.5%)ありました。

図表 10年後の経営状態(現在の収支状況別)

未来に希望を描く病院になるために

このことは現在の明るい状況(黒字)が、必ずしも将来の明るさを約束するものではないこと、逆に現在赤字であっても、取組次第では未来に希望を描ける病院にもなれることを示しています。大切なのは、現在の状況に関わらず、将来のための知恵・工夫・実践といったものです。

これからの連載では、病院を取り巻く状況を概観した上で、計画・管理、人材・労務管理などの主要なトピックごとにデータの解説を加えながら、明るい未来を目指す病院になるための鍵を探っていきます。

(福田 和久)

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