2024.09.11
株式会社日本能率協会総合研究所(JMAR、代表取締役社長:譲原 正昭)では、300人以上の企業に勤務する正社員1万人を対象に、企業における従業員エンゲージメントの実態や、転職意向とその背景を探り、企業の人事マネジメントに活かしていただくことを目的に、「働きがいに関するアンケート」を行いました。
「働きがいに関するアンケート」
※「無料レポート」のご説明のとなります。
後日、メールで視聴用URLをお送りします。
調査結果のポイント
- 25~34歳は転職活動が当たり前、エンゲージメントが高いと転職にアクティブな層は減少する
◇特に転職活動が活発な年齢層(転職活動中もしくは過去3年以内に転職を検討)は25~34歳であり、そのうち8.9%が現在転職活動中、44.1%が過去3年以内に転職を検討した層である。転職を考えたことがない層は半数を下回り、転職を考えるのは当たり前となっている。
◇25~34歳のエンゲージメント層(会社への誇りと仕事へのやりがいの両方が高い)を見ると、転職活動中は4.2%と半減し、過去3年以内に転職を検討した層は32.7%と10%以上減るものの、転職に関心を持った層が一定層いることがうかがえる。ただし、転職を考えない層が63.1%と、不満層に比べても2割以上多く、エンゲージメントを高めることが、転職を考えないことにつながると考えられる。
- 25~34歳に転職させないためには「仕事のやりがい」が重要、転職の引き留めには、「柔軟な働き方」や「勤務地」が寄与しており、特にリモートワークの頻度が高いと「柔軟な働き方」を理由に現職に留まる傾向
◇過去3年以内に転職を考えたことがない理由としては、「仕事のやりがい」(26.9%)、「勤務地」(26.4%)、「給与」(22.9%)が三大理由となっている。一方、技能職は「給与」を最も重視する傾向が見られる。
◇25~34歳が転職を検討しつつも思い留まった理由としては、「希望する転職先が見つからない」を除くと、「柔軟な働き方」と「勤務地」が上位に来ている。柔軟な働き方ができる工夫は、人材の流出を防ぐための重要なポイントといえる。
- 従業員エンゲージメントを高めることは、管理職志向の向上にも寄与
◇将来管理職になりたいかを尋ねたところ、肯定的な回答は非管理職の25%程度と少ないが、エンゲージメント層は倍近くとなり、管理職になることにも前向きである。したがって、管理職候補になる年代に対しては、エンゲージメントを維持・向上させることが重要である。
- JMARで定義した従業員エンゲージメント(会社への誇りと仕事へのやりがいの両方が高い)は、人材版伊藤レポートの従業員エンゲージメント(会社の目指す方向性に共感し、貢献意欲が高い)と合致し、特にリテンションにつながる
◇JMARにおける定義の従業員エンゲージメントの高い層と、人材版伊藤レポートの従業員エンゲージメントである「企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて貢献しようという意識を持っていること」の肯定層との合致度を検証すると、70~75%は合致していることが検証された。
◇また、JMAR定義のエンゲージメント層を分析すると、転職を考えたことがない人の割合が高くなっており、本定義のエンゲージメント層は転職リスクが少ないことが示唆された。
- 「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」は回答者側からは同義と捉えられている
◇「会社で働くことに満足しているか」と、エンゲージメントとして定義されている内容の「働きがいのある会社か」「貢献意欲が持てる会社か」など、いくつかの項目と関係性を分析しても、かなり相関が高く、回答者にとっては同義と捉えられている。従って、「当社で働くことに満足している」という問いであったとしても、従業員エンゲージメントの高さを問う設問として活用できる。
調査結果についてのコメント
エンゲージメントが低いと、転職リスクが高いことが改めて検証されたが、転職活動がアクティブな30代前後の層においては、エンゲージメントが高くても、4割近くは転職活動中もしくは検討して思い留まった層であることが分かった。従って、一定の流出リスクは避けられない時代であることを念頭におきつつも、エンゲージメントが高い層は転職リスクが低いことも事実である。20代後半になるとエンゲージメントが急に低下する傾向があるため、20代前半からのエンゲージメントを維持・向上させる従業員経験が重要であると言える。従業員経験としては、「仕事のやりがい」が重要な転職リスク回避のポイントとなっており、上司は部下の強みや志向を見極めつつ、いかに仕事において充実感を感じてもらうかが必要となっている。また、転職を考えた層を引き留まらせる要因としては、「柔軟な働き方」が重要であり、働く環境の整備が不可欠となっている。
しかし、働きやすい環境の整備は、検討していた転職を踏み留まらせる手段となり得るものの、仕事そのものの充実感がないと従業員エンゲージメントは高まらないため、企業においては、“働きやすさ”と“働きがい”の両輪が求められている。
また、従業員満足度調査からエンゲージメント調査に移行する流れのある中で、企業と従業員の関係性の変化はあるが、日本企業の従業員を対象としたアンケートにおいては、「当社に満足しているか」という問いに肯定している層が多ければ、従業員エンゲージメントが高いと言っても問題はなく、各社において、大切にしている価値観や回答者に伝わりやすい言葉を使った設問が適していると言える。
調査概要
- 調査名称
- 働きがいに関するアンケート
- 調査対象
- 従業員300名以上の企業における会社員・会社役員
- 対象者数
- 10,000名
- 年代の内訳
- 20代以下:20.1%、30代:30.6%、40代:19.3%、50代以上:30.1%
- 性別の内訳
- 男性:58.8%、女性:41.2%
- 業種の内訳
- 製造業:30.3%、非製造業:69.7%
- 役職の内訳
- 一般職員:60.0%、主任級:13.5%、係長級:9.0%、課長級:11.7%、部長級以上:5.8%
- 調査期間
- 2024年7月11日~7月16日
- 調査方法
- インターネット調査
- 企画・実施
- 株式会社日本能率協会総合研究所(JMAR)
調査結果
1.25~34歳は転職活動に積極的であり、 半数以上が転職活動中または直近3年以内に転職を考えたことがある
- 「転職活動中」「直近3年以内に転職を考えたことがあるが、転職はしていない」「直近3年以内に転職を考えたことはない」の3段階で転職活動状況を調査したところ、25~29歳と35~39歳において「転職活動中」と回答した層は、10%を超えている。また、「直近3年以内に転職を考えたことはない」と回答した割合は25~29歳が最も小さく、年齢が上がるにつれてその割合が大きくなる。
- 25~29歳および30~34歳においては「転職活動中」「直近3年以内に転職を考えたことがあるが、転職はしていない」のいずれかに回答した層が半数を超えていることから、転職について比較的アクティブな年齢層であると言える。
2.エンゲージメントが高い層(*1)の7割以上は過去3年以内に転職を考えたことはない
- 転職にアクティブな25~34歳に転職意向をたずねたところ、8.9%が「転職活動中」と回答した。
- JMARの定義の「エンゲージメント層」(*1)に着目すると、「転職活動中」と回答した層は4.2%に留まり、「直近3年以内に転職を考えたことはない」と回答した層は63.1%という結果となった。
- 「不満層」では「転職活動中」が10%以上に上ることから、離職率の低下にエンゲージメントが寄与していることが示唆される。
*1<参考>JMARの従業員エンゲージメントの定義による区分
3.25~34歳の転職アクティブ年代においては、「仕事のやりがい」が転職を考えない理由の1位
- 25~34歳の「直近3年以内に転職を考えたことはない」理由を見ると、「今の仕事にやりがいを感じているから(以下、仕事のやりがい)」(26.9%)、「勤務地に満足しているから(以下、勤務地)」(26.4%)、「今の会社の給与に納得しているから(以下、給与)」(22.9%)が上位に見られる。
4.25~34歳の転職アクティブ年代が転職を思い留まった理由として、「柔軟な働き方」「勤務地」が重視される
- 25~34歳の「直近3年以内に転職を考えたことがあるが、転職はしていない」理由を見ると、「今の会社で柔軟な働き方ができるから(以下、柔軟な働き方)」(14.4%)、「今の会社の勤務地に満足しているから(以下、勤務地)」(14.1%)が上位である。
5.25~34歳のリテンションには、リモートワーク不可なら「勤務地」、可能なら「柔軟な働き方」が有効
- 25~34歳の転職アクティブ層は、リモートワークの有無及び頻度によって転職を思い留まる要因に違いが見られ、リモートワークを実施していない層は「勤務地」を重視している。また、リモートワークを実施している層のうち、頻度が高い「週2~3回程度」と「週4回以上」は、「柔軟な働き方」が最重視されている。
6.職種では技能職でエンゲージメント層が少なく、年齢別では20代前半がピークで30代後半が最少、それ以降は年齢が上がるにつれエンゲージメント層の割合は増える傾向
- 職種別で見ると、研究・開発職の「エンゲージメント層」が33.0%で最も多い一方、技能職は23.6%に留まり、「不満層」が半数近くいる状況である。技能職を多く抱える企業においては、技能職のエンゲージメント向上が重要である。
- 年齢別では、20~24歳の「エンゲージメント層」が31.1%で最も多く、年齢が上がるにつれ、その割合は減っていき、最も少ないのが35歳~39歳で24.7%となっている。その後、「エンゲージメント層」の割合は年齢が上がるにつれ増えていくため、20代や30代の従業員経験の充実により、エンゲージメント層を増やすことが求められている。
7.エンゲージメント層の約半数に管理職志向がある一方で、不満層(非エンゲージメント層)の約半数は管理職にはなりたくない否定的な姿勢を示している
- 管理職志向はエンゲージメント層において最も高く、48.3%である。
- 不満層において、管理職志向は10.3%であり、否定層が5割を超えている。
8.人材版伊藤レポートにおける従業員エンゲージメントの定義とJMAR定義の従業員エンゲージメントの定義*2は概ね合致
- 人材版伊藤レポートの定義に従い、「会社が目指す姿の達成に向けた貢献意欲」と「会社が目指す姿や方向性への共感度」の2つの設問に肯定回答した層と、「仕事のやりがい」と「会社に対する誇り」の両方に肯定した層を比較すると、72.4%が合致していた。(否定層では75%が合致)
- JMARで定義している「安住層」と「個人主義層」を比べると、人材版伊藤レポートによる定義においては、「安住層」の方が「個人主義層」よりも「従業員エンゲージメント」が高いと言える。
*2 人材版伊藤レポートにおける従業員エンゲージメントの定義:「企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて貢献しようという意識を持っていること」
(https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_1.pdf)
9.JMARで定義している従業員エンゲージメントが高い(「会社への誇りと仕事へのやりがい」の両方が高い)層は、他の定義におけるエンゲージメント層と比べても、転職リスクが小さい
- 「直近3年以内に転職を考えたことはない」の割合は、1万人のうち56.1%であったが、JMARで定義するエンゲージメント層(会社への誇りと仕事へのやりがいの両方が高い)を見ると、72.4%と10%以上多くなっている。
- 「働きがいのある会社だと感じている」や「会社に共感+貢献意欲あり(人材伊藤レポートの定義に肯定)」等、他の定義と比べても、JMARで定義するエンゲージメント層の「直近3年以内に転職を考えたことはない」の割合が最も高くなっている。
10.従業員目線では、「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」は、同義でとらえられている
- 「従業員満足度調査」から「エンゲージメント調査」に移行する流れがある中、「従業員エンゲージメント」を測るアンケートとして、日本企業の従業員に「会社に満足しているか」に代わる設問としてふさわしい項目を検証した。
- 「従業員エンゲージメント」の定義はさまざまであるため、下記の複数のパターンで「会社に満足しているか」との相関をとることで検証を行った。
① 「会社が目指す姿の達成に向けた貢献意欲」:人材版伊藤レポートの定義に従った貢献意欲
② 「会社が目指す姿や方向性への共感度」:人材版伊藤レポートの定義に従った方向性への共感度
③ 「求められる以上の貢献をしようと思う気持ち」:ワークエンゲージメントや熱意を測定する項目
④ 「働きがいのある会社」:多くの日本企業で一般的に使われている項目
⑤ 「会社に対する誇り」:多くの日本企業で一般的に使われている項目
⑥ 「会社に対する愛着」:“エンゲージメント”という語源に近しい項目
⑦ 「継続勤務意向」:日本企業が重視している項目
※相関係数は、一般に0.4以上でかなり相関関係があるとされ、0.7以上だと強い相関関係といえる
- 結果として、①~⑦のすべてで0.6~0.8程度の相関が見られており、日本語的な意味合いは異なるものの、実際には大差がないものと考えられる。
「働きがいに関するアンケート」
※「無料レポート」のご説明のとなります。
後日、メールで視聴用URLをお送りします。
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