日本能率協会総合研究所 マネジメント&マーケティング研究事業本部

コラム
顧客視点に関する事例
~調査で顧客視点とのズレを明確化し、施策変更~

従来から多くの企業で「顧客視点」が重視されてきましたが、「自社の提供品質向上によりお客様が喜ぶ」ことを期待して取り組んだ結果、「自社施策と顧客ニーズのズレ」が生じるケースもありました。
このズレを認識されている企業では、「顧客視点」を繰り返し見直し、自社施策の改善をされています。
そのため、今回は「顧客視点」を意識して施策に繋げた事例をご紹介します。

顧客視点に関する事例紹介動画はこちら

1.お客様との視点の違い

本来は「顧客視点」で示した例のように「お客様に思っていただきたい」と考え、その実現のために「自社内でルールを決める、施策を行う」といったことをしていたはずです。しかし、後者に取り組むうちに、「やるべきことがきちんと出来ているか」への意識が高まり、肝心の顧客視点から離れてしまうケースが見られるようになりました。

そのためか、顧客満足度調査(CS調査)やNPS®調査の項目が自社視点中心になり、顧客視点が希薄なケースが散見されます。お客様に直接尋ねないとわからないことは尋ねず、社内でも確認可能なことをお客様に尋ねていると、自社視点に寄った施策立案になる可能性もあります。

昨今のこのような状況を踏まえ、今回は顧客視点と距離が生じた事例をご紹介します。

2.事例紹介 A社

今回の事例は、「商品は評価されているが、それだけでは差別化が難しくなってきた」という、様々な業界でよくあるものです。そして、「エンドユーザーに一番のパートナーだと思っていただける」よう、営業担当者が専門性の高い提案が出来るようにスキルを高める施策を行っています。

顧客満足度を問うアンケート調査(CS調査)での商品評価は高いものの、それを活かす提案が今一つで、この結果では「営業担当者の提案力向上を」という結論になりがちです。
しかし、この事例の場合は、「お客様は必ずしも営業担当者により専門的な提案を求めているわけではない」ということが、ヒアリング調査の併用で明らかになりました。

「自社に適した提案は是非欲しい」というお客様は多いものの、「営業担当者はタスクが多く、新たなタスクの追加は難しい」「営業担当者がニーズを掴んだ後は他部署引き継ぎ、専門分野に強い人から提案があればよい」という声が目立つ結果でした。
これにより、「営業担当者のスキルアップにより、お客様に応えていく」という自社方針とお客様の考えにはズレがあることと、その内容が明らかになりました。

そのため、一番左側のA社の例では自社方針は変えず、営業担当者の担っていた業務の一部を他の方が担う体制変更を行いました。

同様に自社方針は変えずに営業担当者の業務の一部の自動化等で、A社とは異なる形で営業担当者の負担を減らしたケース(中央)もあります。また、お客様への応えやすさを優先し、営業担当者のタスクは変えずに新たに作った専門部署から提案する形に変えたケース(右側)もあります。

いずれにしても、お客様とのズレとその内容の確認により、現実的な施策変更が可能となりました。

3.不満解消と品質向上の先へ

日本企業の多くは、まずはお客様の大きな不満を潰し、その後は各方面の不満を減らすことに取り組んでいます。そして、全面的な品質向上(商品に限らず対応品質も含む)がお客様に喜ばれることに繋がると考え、真摯に取り組まれています。
こうして自社なりの品質向上を継続しているうちに、「確かにA社のレベルは高いが、実際には他社を選択している」という残念なケースも、一部では発生しています。

例えば、業界内でA社の商品は間違いなく上位だが、お客様が「自社にフィットするか」という視点で見ると「他社商品の方が、自社にはよりフィットする」という状況になっていたり、A社の担当者を高く評価しつつも「他社の専門部署からの提案の方が、よりフィットする」という状況になっている場合があります。

このように、「自社視点での品質向上の継続が、お客様によりフィットするものに繋がったか」という意味では、ズレが発生してしまうケースが中にはあるということです。
こうした場合は、長年磨いてきた商品機能や担当者の対応品質等の土台の良さは大事に活かしつつ、「それが本当にお客様にフィットしているのか、役に立っているのか」という視点で再度見直すことがブレイクスルーに繋がるケースもあると考え、今回の事例をご紹介しました。

そして、実はこの事例を出した理由がもう1点あります。
「担当者は既に手一杯であり、これ以上を求めることは難しい」「個人の頑張りやスキルだけの問題ではなく、体制の問題ではないか」という類のお客様のご指摘は、今回に限らず時々お聞きします。

しかし、項目が細分化された顧客満足度調査の中には、こうした組織の横串となる部分が確認しにくいケースもあります。お客様に応えていくためには、そこに注目することも必要と考え、この事例をご紹介しました。

ご参考になる点があれば、幸いです。

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