CSの取り組みは「不満解消」から「自社の特長で喜ばれる」へ移行傾向
事業成長を意識して評価に満足度と継続利用意向を併用
~「第5回お客様満足(CS)向上への取り組み実態調査」を発表~

日本能率協会グループで1991年に国内で初めて「製品・サービスのお客様満足度調査(略称:CS調査)」結果を発表して以来、弊社はお客様満足の向上を目指す企業のご支援を行ってまいりました。
現在は多くの企業で、お客様の声を捉えて満足を高める取り組みが継続的に行われています。
近年は「既に高い満足度を得ているが、今後はどこまで高めるべきなのか」「お客様満足の向上が事業成長に繋がるのか」「取り組みが形骸化して、停滞している」等と悩まれる企業も多く、ご相談を受けることが増えています。
また、「満足度」以外に様々な評価指標も使われるようになり、自社に適した指標選択もお悩みの一因となっています。
そこで今回は、企業のCSの取り組みに関する考えとお客様からの評価指標を中心に調べてみました。

調査結果のポイント
  1. ほとんどの企業が「お客様の声(評価)」を収集しているが、うまく活用できていない企業が多数派。
  2. 取り組みの際には、まずは目立つ不満の解消に注力する企業が多い。
    その後は全方位で満足されることを目指す企業が多いが、自社の特長に注力して喜ばれることを志向する企業も見られる。
  3. CS向上の取り組み内容と、企業のビジョン・方針等が乖離している企業が多い。
    両者の繋がりが弱い企業では、収集したお客様の声(評価)を活かせず、今も目立つ不満の解消にとどまっている。
  4. お客様からの評価は「満足度」で測る企業が多いが、自社にあわせて他の指標との併用も進んでいる。
    特に事業成長との関係性を意識する企業では、「推奨意向(NPSを含む)」より「継続利用意向」がよく使われている。
調査概要
調査名称
第5回お客様満足(CS)向上への取り組み実態調査
調査期間
2018年1月30日~3月5日
調査方法
郵送調査とインターネット調査を併用
企画・実施
株式会社日本能率協会総合研究所(JMAR)
調査結果
1.ほとんどの企業が「お客様の声(評価)」を収集しているが、うまく活用できていない企業が多数派。

となっている。

「お客様の声(評価)」の収集状況 収集された「お客様の声(評価)」の活用状況

2.取り組みの際には、まずは目立つ不満の解消に注力する企業が多い。
その後は全方位で満足されることを目指す企業が多いが、自社の特長に注力して喜ばれることを志向する企業も見られる。

CSに関する考え

3.CS向上の取り組み内容と、企業のビジョン・方針等が乖離している企業が多い。

ビジョン・方針等の実現に繋がるようなCS向上の取り組み実施状況

両者の繋がりが弱い企業では、収集した「お客様の声(評価)」を活かせず、今も目立つ不満の解消にとどまっている。

ビジョン・方針等の実現に繋がるようなCS向上の取り組み実施状況例

4.お客様からの評価は「満足度」で測る企業が多いが、自社にあわせて他の指標との併用も進んでいる。
特に事業成長との関係性を意識する企業では、「推奨意向(NPSを含む)」より「継続利用意向」がよく使われている。

お客様からの評価の指標 「事業成長により関係性のある指標を使いたい」企業で、使われている指標

調査結果についてのコメント

株式会社日本能率協会総合研究所 CS経営研究室 主幹研究員 田中理恵

今回の調査では、多くの企業が「お客様の声(評価)」を収集しているが、うまく活用できていないことがわかりました。
さらに、全社や組織のビジョン・方針等の実現とCS向上の取り組みとの繋がりが弱い企業が多く、この場合は「お客様の声(評価)」を収集しても目立つ不満の解消にとどまりがちとなっていました。ここから、長年取り組む間に「CS向上」自体が目的となり、成長につながる道筋が見えにくくなっていることや、ビジョン・方針等の実現とCS向上の二方向から対応を求められた現場で動きが滞ることが懸念されます。
こうした状況が、日頃弊社に寄せられている「お客様満足の向上が事業成長に繋がるのか」「取り組みが形骸化して、停滞している」といったお悩みの背景にあると推察されます。

また、CSに関する取り組みが定着して既にある程度の満足を得ており、「目立つ不満の解消」の次の段階に進んでいる企業も多く見られました。
この多くは「様々な欠点を解消」して全てにおいて満足されることを目指していますが、中には伸ばすべき自社の特長に注力することで喜ばれようとする企業も見られます。「今後は満足度をどこまで高めるべきなのか」とお悩みの企業は前者に該当するケースが多く、その真摯な取り組みによって様々な商品・サービスの品質向上が進んだ半面、「他社に負けているところを強化する」ことで、業界内で各社の違いがなくなる懸念もあります。
今回の調査で後者は2割近くに達していましたが、今後各社がビジョン・方針との繋がりやリソース等を見直した際に今までとは違う選択を行う可能性もあり、今後はこの割合の変化も注目していきます。

近年は「お客様満足の向上が、事業成長に繋がるのか」「既にある程度の満足は得ており、どのような数値目標を持つべきか」といった観点で、評価指標に悩まれる企業からのご相談も増えています。
これに関連して、今回の調査では 「満足度」以外の評価指標との併用とともに、その際に「事業成長との関係性」を考えて選択していることが明らかになりました。併用される指標は、お客様の種類(BtoC、BtoB)等でも異なりますが、今回最も併用されていたのは「継続利用意向」でした。
ただ、同じお客様による継続利用を前提にしていない事業もあるように、事業内容やお客様の種類等の違いで何が成長に繋がるかは異なるため、各社が自社に合った選択をしようと「満足度」以外にも新たな指標も試みている状況がうかがえます。
「自社に適した指標」を選び、活用できているかはさらに重要になると考えられ、今後はそこも含めてCS向上の取り組みの変化を捉えて発信していきます。

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