日本能率協会総合研究所 マネジメント&マーケティング研究事業本部

コラム
【ガバナンス特集】ポスト・コロナ時代のガバナンス
~企業からの積極的な働きかけが重要に~

2020.11.24

上田 翔一

金融機関勤務を経て、2018年4月入社。主にコンプライアンスをテーマとした意識調査の受託に従事。
中小企業診断士。

1.不可逆的に進む「テレワーク」という働き方

テレワークとは、「tele=離れた所」と「work=働く」を組み合わせた造語であり、情報通信技術を活用し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことを指す。テレワークには、自宅で働く「在宅勤務」、社内外にある別のオフィスで働く「サテライトオフィス勤務」、移動中等に働く「モバイルワーク」の3つの分類がある1

テレワークという概念自体は決して新しいものではなく、総務省「通信利用動向調査」では、1999年から調査項目に入っている。また、近年では、2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピック開催期間における交通混雑緩和のためにテレワークの推奨がなされていた。

【図表-1】テレワークの3つの分類

(出典)厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」2

1 https://japan-telework.or.jp/tw_about/
2 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html

2020年春に、新型コロナウイルス感染拡大を受けて政府から緊急事態宣言が発令され、日本全国の各企業は、感染拡大防止の観点からテレワーク(特に在宅勤務)の導入を急速に進めた。東京商工会議所の調査3によると、2020年3月時点ではテレワーク導入企業は26.0%であったが、同年6月には67.3%にまで増加している。

2020年7月に閣議決定された「骨太方針2020」4においても、「新たな日常」における「新しい働き方」として、テレワークの定着が掲げられている。テレワークという働き方は、新型コロナウイルス感染拡大予防のためという一時的な措置ではなく、これからの「働き方」におけるごく一般的な選択肢として定着する方向へ進んでいるといえる。

2.テレワーク下における課題

2020年8月に厚生労働省に設置された「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」第1回資料5によると、テレワークの効果として、労働者側では「時間の有効活用」「仕事に集中しやすい」という意見が多く、企業側では「働き方改革の進展(時間外労働の削減)」「業務プロセスの見直し」という意見が多い。

テレワークにおける課題では、労働者側では社内外との打ち合わせや電子化・ペーパーレス化の意見が、企業側ではネットワーク環境の整備や情報セキュリティ対策の意見が多い。

【図表-2】テレワークにおける課題

(出典)厚生労働省 第1回「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」
<参考資料>テレワークを巡る現状について

3 https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1022366
4 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/decision0717.html
5 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12991.html

3.ポスト・コロナ時代だからこそ、社員への働きかけが重要になる

日本能率協会総合研究所では、「従業員満足度(ES)」や「コンプライアンス意識」をテーマとして、企業から社員向けの意識調査の受託事業を行っている。2020年度は、テーマに関わらず、テレワークに関する設問をこのような意識調査の中に加え、社員がどう感じているかを把握したいという相談が多く持ち掛けられている。

2020年夏以降に意見交換をした多くの企業では、前掲の検討会資料における労働者側調査結果と同様、コミュニケーションに関する問題意識を持つ企業が多い。具体的には、メールやチャットがコミュニケーションの中心となったことをどう感じているか、WEB会議でのコミュニケーションは十分にとれているか、といったものである。また、「テレハラ(テレワーク・ハラスメント)」「リモハラ(リモートワーク・ハラスメント)」という新しい単語が登場したように、テレワーク特有の状況から生じるハラスメントを懸念する企業が多い。このほか、情報セキュリティや労務管理を懸念する意見が聞かれる。

【図表-3】企業が懸念するテレワークの具体的な課題(例)

  • メールやチャットがコミュニケーションの中心となっていることをどう感じているか
  • WEB会議での情報共有は十分か
  • テレワークできる職種とできない職種の間で、不公平感を感じていないか
  • 「テレハラ」「リモハラ」のような問題は発生していないか
  • 在宅勤務では、家族も「社外の第三者」になることをきちんと意識しているか
  • テレワークが長時間労働やサービス残業につながっていないか

社員を「監視」するだけのガバナンスは望ましいものではないが、例えば「何かあったら相談してきてください」と注意喚起をしているだけでは、ポスト・コロナ時代のガバナンスとしては不十分だろう。そのような状況下であがってくる相談事は、既に問題が大きくなってしまっている可能性がある。企業を取り巻くステークホルダー(株主、従業員、取引先、地域経済、等)の利益を損ねるような行為が行われていないか、小さな予兆の段階から把握して対応することは、企業のガバナンスにおいて重要な仕組みである。

社員向け意識調査は、社員の状態を「見える化」する1つの手段である。日本能率協会総合研究所は、これまで蓄積してきた専門的なリサーチ技術を基に、ポスト・コロナ時代のガバナンスに関する諸課題の解決支援を通して企業の成長を支えるとともに、日本経済の発展に貢献することを目指している。

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