会社にとっての「エンゲージメント」とは?ビジネスシーンにおける意味・定義や高める方法を解説

2025.11.05

エンゲージメント(engagement)は、約束や契約、誓約、婚約などの意味を持つ単語ですが、ビジネスシーンでは一般的にどのような意味、定義の言葉として使われているのでしょうか。

今回の記事では、国内の民間企業を中心に日本の労働慣行に配慮したエンゲージメントサーベイ(従業員エンゲージメント調査)を実施し、経営課題の解決に向けた施策の提案まで行っているJMARが、ビジネスシーンにおけるエンゲージメントの意味・定義を解説していきます。

また併せて、近年のビジネスシーンにおいてエンゲージメントという言葉が注目を集めるようになった背景や、企業が従業員エンゲージメントの向上に取り組むことのメリット、その方法の具体例なども紹介していきますので、企業の人事部・総務部の方はぜひ参考としてご覧ください。

ビジネスにおける「エンゲージメント」の定義は?

ビジネスシーンにおいてエンゲージメントという言葉を使う時は、会社と従業員などの個人、または顧客企業といった「自社と関係者とのつながり、絆」という意味で使うのが一般的です。

なお、ビジネスシーンにおけるエンゲージメントには大きく「従業員エンゲージメント」「ワークエンゲージメント」「顧客エンゲージメント」の3種類があり、誰(何)と誰の関係性を表すかによって言葉の意味、定義が少しずつ変わってきます。

従業員エンゲージメント・ワークエンゲージメント・顧客エンゲージメントの意味、定義の違いについては、それぞれ以下で確認していきましょう。

従業員エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントとは、企業や団体等の組織とそこで働く一人ひとりの従業員との関係性、そして従業員が所属する組織に対して抱く愛着や思い入れの程度を表す指標のことです。

従業員が組織のミッションやビジョンに深く共感し、強い愛着や誇りを持って働いているほど従業員エンゲージメントが高い状態となり、逆に従業員が組織への愛着や思い入れをあまり抱いておらず、両者の信頼関係が希薄な状態であれば、従業員エンゲージメントが低くなります。

なお、従業員エンゲージメントと似た言葉に「従業員満足度」がありますが、従業員満足度は単に待遇や労働環境に対する従業員の満足度を示す指標のことであり、所属組織への共感や愛着まで含めた関係性の強さを表す従業員エンゲージメントとは区別されるため、注意が必要です。

ワークエンゲージメントとは

ワークエンゲージメントとは、組織から提供される仕事と従業員との関係性のこと、また従業員が仕事に対して持つ熱意、やりがいの程度のことです。企業等の組織そのものではなく、組織の仕事と従業員個人との関係性に着目した指標であるというところが、大きな特徴です。

従業員が自身の仕事にやりがいや誇りを感じ、ポジティブな気持ちで日々の業務に取り組んでいる、仕事から活力を得ている状態であれば、ワークエンゲージメントが高いと言えます。

顧客エンゲージメントとは

顧客エンゲージメントとは、企業や団体等の組織と顧客との関係性、またそのつながりの強さを示す指標のことです。自社と自社にとってのお客様となる組織、および個人との関係性を表す言葉で、以下のような条件を満たすと顧客エンゲージメントが高い状態となります。

なお、顧客エンゲージメントと似た印象のある「顧客満足度」は、企業全体ではなく、企業が提供する商品・サービスへの満足度を示す指標であるため、顧客エンゲージメントとは区別して使うのが一般的です。

企業がエンゲージメントの向上に取り組むメリット

ビジネスの現場におけるエンゲージメントの意味や定義、基本的な使い方を理解できたら、次は、企業が各種エンゲージメントを高めることのメリットについて理解していきましょう。

企業が従業員をはじめとする自社の関係者とのエンゲージメント向上に取り組むことで得られるメリットとしては、大きく以下の3点が挙げられます。

従業員エンゲージメントが高くなれば、ワークエンゲージメントも自然と高まっていくため、社内に熱意とやりがいを持って仕事に取り組む従業員が増えていくと考えられます。

従業員エンゲージメント・ワークエンゲージメントが高い従業員は、会社が掲げるビジョンや目標の達成に向けて自発的に行動する傾向が強くなるため、日々の業務におけるパフォーマンス・生産性も高まり、会社の業績や売上、顧客エンゲージメントの向上に貢献してくれます。

また彼らは、所属組織の一員として長く働き続けることに意義を見出し、仕事に対するやりがいも感じているため、離職・転職する可能性が極めて低いと言えます。そのためエンゲージメント向上のための取り組みには、離職率の低下や、採用コスト削減への効果も期待できるのです。

【事例】JMARのエンゲージメントサーベイ活用企業様のご紹介

エンゲージメント低下によるビジネス上のリスクとは?

従業員エンゲージメントとワークエンゲージメント、顧客エンゲージメントは相互関係にあるため、いずれかを高めることができれば好循環が生まれて相乗効果を得られることも多いです。

しかし一方で、いずれかのエンゲージメントが低下すると、他のエンゲージメントもその影響を受けて低下してしまうため、従業員エンゲージメントの低下をきっかけに業績の低迷や優秀な人材の流出、採用コスト上昇などの現象が同時多発的に起きてしまうこともあります。

エンゲージメントの低下は、企業活動にとって重大なリスクとなり得ることを十分に理解し、会社全体としてエンゲージメント向上のための対策を行う必要があると覚えておきましょう。

ビジネスシーンでエンゲージメントが重要視される理由

ここまでに見てきたように、各種エンゲージメントを高めるための取り組みは、企業が存続していく上で、また継続的な発展と成長を目指す上で欠かせない施策の一つとなってきています。

このように、企業によるエンゲージメント向上のための取り組みが重視されるようになってきた背景には、近年になってから特に従業員エンゲージメントに対する社会的な認識が変わってきたことが挙げられるでしょう。

1990年にアメリカで誕生した従業員エンゲージメントの概念は、2010年代に入った頃、日本の企業においても「会社の業績や離職率等に影響を与える要素」の一つとして、少しずつ知られるようになっていきました。

その後、2018年に国際標準化機構(ISO)が「人的資本開示ガイドラインISO30414」を、2023年には金融庁が「有価証券報告書の人的資本に関する情報開示の義務化」を発表。これにより、日本でも一定以上の規模を持つ企業において、人的資本状況に関する情報開示が義務化されることとなりました。

【参考】
有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和5年度):金融庁
ISO 30414:2018 – Human resource management — Guidelines for internal and external human capital reporting

人的資本に関する情報とは、会社にとって資本の一つである従業員(=人)をどのくらい大切にしているかを測るための情報のこと。具体的には、その企業の従業員が保有する能力やスキル、待遇、人材育成にかける費用等の他、従業員エンゲージメントのスコアも含まれてきます。

人的資本開示によって公開された情報は、投資家や顧客にとっては投資先・取引先を選ぶ際の重要な基準に、そして人材にとっては、就職先・転職先を決める上での検討材料となります。

つまり2025年現在において、従業員エンゲージメントのスコアは企業の人事問題だけでなく、企業全体の社会的な評価にも大きく影響を及ぼす数値だと認識されるようになったのです。

以上のような背景から、人的資本開示に対応するため、また従業員の価値観の変化に対応し、少子高齢化の時代においても優秀な人材を確保するために、従業員エンゲージメントをはじめとする各種のエンゲージメントのスコアを重視する企業が増加していると考えられます。

ビジネスのために従業員エンゲージメントを高める方法

ここからは、自社における従業員エンゲージメントを高めるために企業ができること、具体的な方法について計5つ紹介していきます。今後ますますビジネスを円滑に進めていくために、まずは自社従業員のエンゲージメントを高めていきたいという場合は、参考としてご覧ください。

【その1】マネジメントを強化し、心理的安全性を高める

「雇用先から大切にされている」と感じてもらうことができれば、従業員エンゲージメントの向上につながると考えられます。具体的な方法としては、上司によるマネジメントを強化して組織における従業員の心理的安全性を高め、人材に対する姿勢を伝えるやり方が挙げられます。

上司が業務連絡だけでなく、部下のキャリアに関する悩み等にも耳を傾けられる仕組みづくりをしたり、コーチングスキルの獲得やリーダーシップの向上に役立つ研修をマネジメント層に提供するなどして、組織のマネジメント力を強化しましょう。

【その2】キャリアアップや成長を支援するための制度を作る

従業員が自身の希望に沿って成長していける、キャリアアップしていける制度があれば、職場への不満が解消されやすくなるため、人材の定着率向上やエンゲージメント強化に役立ちます。

具体的には、リスキリング支援や社内公募の制度を新設するなどして社内でのキャリアの選択肢を広げ、離職しなくても従業員の希望に近いキャリアパスを歩めるようにして、成長を支援すると良いでしょう。

【その3】社員間における縦のコミュニケーションを強化する

従業員エンゲージメントを高めるには、企業の理念やビジョン、パーパスを従業員に浸透させ、理解と共感を得る必要があります。企業としての考えや向かうべき方向性をすべての社員に周知できるように、わかりやすい言葉で明確に、継続的に発信することを徹底してください。

また、経営陣から一方的に発信するだけでなく、社員の声を経営に活かす仕組みを設立・強化すること、またそのための取り組みを通して縦のコミュニケーションができる組織作りを行い、人間関係を改善していくのも従業員エンゲージメントを高める施策として効果的です。

【その4】従業員が将来に希望を持てる中期計画を提示する

会社のビジョンやパーパスをよりわかりやすく、一人ひとりの社員が実感・イメージしやすい形で伝える方法としては、3〜5年後に向けた中期経営計画を示すというやり方もあります。

従業員が希望を持てる、将来への期待が持てるような中期経営計画を策定・提示することができれば、従業員が会社に愛着を持ったり、信頼関係を深めるきっかけになるかもしれません。

【その5】納得感のある評価・承認のシステムを構築する

会社の人事評価の基準・制度を、従業員が「適正に評価されている」「自身の働きをきちんと見て、認めてくれている」と感じられるような内容に変え、本人が望むキャリアパスの承認や昇給、表彰といった目に見える形で表すのも従業員エンゲージメントの向上に非常に効果的です。

給与の水準や昇給の仕組みも含め、人事制度や人材の評価システムを見直し、従業員が納得しやすいものに変えていくには時間も労力もかかりますが、従業員エンゲージメント向上の効果が期待できる施策なので、ぜひ他の施策と併せて積極的に実施を検討してみてください。

現状の把握が、ビジネスのエンゲージメント向上の第一歩に

現状における自社と関係者とのエンゲージメントを的確に把握していなければ、各種エンゲージメントの強化や、エンゲージメントスコアを改善するための対策を取ることもできません。

私たちJMARでは、メンバーシップ型雇用や年功序列制度が残る日本の労働慣行に配慮した「日本型のエンゲージメント」を調査するエンゲージメントサーベイ(従業員エンゲージメント調査)、及びその結果をもとにした資料の作成、施策提案といったサポートを行っています。

自社と関係先とのエンゲージメント強化の第一歩として、まずは従業員エンゲージメントを正確に調査・把握したいという企業のご担当者様は、ぜひJMARまでお気軽にご相談ください。

日本型の雇用に対応!JMARの「エンゲージメントサーベイ」の特徴とは?

「日本型雇用対応のエンゲージメントサーベイ」ならJMAR

人的資本開示が義務化された現代において、人事部門はもちろん、経営の観点においても従業員エンゲージメントを調査して可視化することの重要性が非常に高まってきていると言えます。

JMARでは、海外とは異なりメンバーシップ型の雇用を主流とする日本型の労働慣行を鑑みた「日本型の従業員エンゲージメント」を調査するエンゲージメントサーベイを提供しています。

《JMARのエンゲージメントサーベイ5つの特徴》

※日本語だけでなく、さまざまな言語を用いたグローバル調査にも対応しております。

また、人事・組織領域に精通した経験豊富な研究員が、エンゲージメントサーベイで得られた結果に洞察を加え、データから導き出された課題に対して実効性の高い施策を提言するところまで、しっかりと支援いたします。

エンゲージメント強化や人的資本経営に関する悩みを抱えていて、調査から結果の分析、具体的な施策の提案までしてくれるパートナーをお探しのご担当者様は、ぜひJMARまでお問合せください!

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