【離職防止のアイデア5選】企業が離職率を下げるためにできる対策の具体例とその考え方

2025.11.19

終身雇用制度により、日本の会社では長らく転職・離職する人が比較的少ない状況でしたが、近年では雇用の流動化や労働者の価値観の変化・多様化により、離職する人も増えてきています。

しかし企業としては、少子高齢化によって労働人口の減少が続く中で離職者が増え、必要数の人材が確保できないという事態に陥るのは、何としても避けたいですよね。

そこで今回は、25年以上にわたりさまざまな企業にエンゲージメントサーベイ(従業員エンゲージメント調査)を提供してきたJMARが、自社の人材の離職を防止するための具体的なアイデア5選を、離職防止策を考える上でのポイントや、対策の重要性とともに解説していきます。

企業で離職者が増えるとどうなる?離職防止アイデアが必要な理由

まずは、なぜ企業が自社の従業員の離職防止に注力する必要があるのか、その理由について確認していきましょう。

企業が自社従業員の離職防止に注力するべき理由の一つ目としては、人材確保の難易度が上昇していることが挙げられます。冒頭でも少し触れたように、近年では労働者の価値観の多様化により、キャリアアップやさらに労働条件・労働環境のよい職場で働くことを求めて退職、転職する人が少なくありません。

その一方で、少子高齢化による労働人口の減少で人材の母数そのものが減少傾向にあるため、新たな人材の採用難易度も高くなってきています。つまり企業が企業として存続し、今後も成長と発展を続けていくためには既存の従業員の離職を防ぎ、人材確保に努める必要があるのです。

また、企業が離職防止に取り組むべき理由の二つ目としては、離職率の上昇が取引先や投資家などステークホルダーとの信頼関係や、企業のイメージ、価値を低下させる恐れがあることが挙げられます。

人材の定着率や離職率は、企業の非財務情報・人的資本情報に該当する情報であり、取引先や投資先となる企業を評価、選択する際の重要な指標の一つです。

離職防止に積極的に取り組まないと、事業の継続・発展に必要な人員を確保できず、事業のシュリンクにつながる恐れもあること、そして離職率が上昇して自社の市場における価値やイメージが低下し、経営にも悪影響が及ぶ可能性があることをしっかりと理解しておく必要があります。

企業が離職防止に注力しないことによるリスクとは

企業が十分な離職防止対策を行わないことによって発生し得るリスク、デメリットの具体例としては、以下のようなものが考えられます。

離職者が増えると既存の従業員の負担が増し、一人ひとりの仕事へのモチベーションが低下。
さらに離職者が増加することで、商品やサービスの質、企業イメージが下がり、結果的にどんどん優秀な人材を採用・確保するのが困難になっていきます。

これからも自社が企業として存続と発展を続けていくためには、上記にまとめたような負のスパイラルに入ってしまう前に社内でアイデアを出し合い、十分な離職防止策を講じる必要があるのです。

離職防止のためのアイデアを考える上で重要なポイント


ここからは、民間企業を中心に経営やマーケティングにおける課題の解決をお手伝いしている私たちJMARが考える「離職防止策を検討する上で重要なポイント」について、紹介していきます。

企業が従業員の離職を防ぐための具体策、アイデアを考える上で重要なのは、労働環境等を整備することによる「働きやすさ」の向上だけではなく、仕事を通して得られる充足感や満足感、達成感、成長実感といった「働きがい(やりがい)」についても向上を目指すことです。

JMARが正社員1万人(※300人以上の従業員を雇用する会社で働く方)を対象に実施した「働きがいに関するアンケート」によると、特に転職活動が活発な25~34歳の年齢層のうち、50%以上の人が現在転職活動中、または過去3年以内に転職活動を検討したと答えています。

一方で、先述の年齢層のうち、過去3年以内に転職を考えたことがないという方にその理由を尋ねると「仕事のやりがい」と答えた人が26.9%となり、最も多いという結果になりました。

また、会社に対し誇りと仕事のやりがいの両方を感じているエンゲージメント層のうち、同じく25〜34歳の方に離職や転職の意思について尋ねると、現在転職活動中・過去3年以内に転職を検討したという人は約15%減少しています。

さらに、転職を検討しつつも思い留まったという方にその理由を聞くと、「希望する転職先が見つからない」という理由に次いで、自社の「柔軟な働き方」「勤務地」という理由を挙げる方が多いという結果が得られました。

【参考】
働きがい1万人調査】 “働きやすさ(柔軟な働き方)”は、検討した転職を思い留まらせる “働きがい(仕事のやりがい)”は、転職を考えさせないカギ

これらの調査結果からも、多くの正社員の方が離職・転職を考え始める理由の一つに仕事のやりがいの低さがあること、そして検討していた離職や転職を取りやめるための材料、理由として、自身にとって働きやすい職場環境かどうかが大きく関係していることが伺えます。

離職防止のためのアイデアを出し合い、具体的な取り組みを検討する時は、従業員にとっての「働きやすさ」の改善だけではなく、「働きがい」を高めるという視点も、忘れないようにしてください。

まず試してほしい!離職防止に効果的な2つの施策

ここからは、自社の従業員が離職するのを防ぐ対策として、まず試してほしい2つの施策について説明していきます。離職防止対策として、企業にまず行ってほしいことは以下の2つです。

従業員エンゲージメントとは、先ほど出てきたエンゲージメントとほぼ同義で使われる言葉で、企業組織とそこで働く従業員との関係性、つながり、また従業員が所属企業に対して感じている愛着や思い入れ、誇り、働きがいなどを数値化した指標のことです。

なお、従業員エンゲージメントを数値化したスコアは、従業員にエンゲージメントサーベイと呼ばれる数十問の質問からなるアンケートに答えてもらうことで、獲得することができます。

【エンゲージメントサーベイの調査項目の例】
仕事、業務負荷、職場、上司、人事制度、マネジメント、コンプライアンス など

日本型の雇用に対応!JMARの「エンゲージメントサーベイ」の特徴とは?

従業員エンゲージメント向上のための施策は、働きやすいように職場環境を整備したり、働きがいを高める上でも効果的なものが多いため、そのまま離職防止にも役立つということが少なくありません。

そのため離職防止を目的とするケースにおいても、まずエンゲージメントサーベイで従業員の本音と自社の現状を把握すること、そして従業員エンゲージメント向上に効果的な施策を確認・実行することが効果的だと考えられます。

なお、従業員エンゲージメントの向上に有効な施策については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。興味のある方は、後述する離職防止のためのアイデアと併せて、ぜひこちらの記事もご確認ください。

自社従業員の離職を防止する!効果的な対策・アイデア5選

ここからは、従業員の離職を防止するための具体的な施策のアイデアを5つ紹介していきます。

【従業員の離職防止に役立つ施策・対策のアイデア5選】

いずれも従業員の離職防止効果、そしてエンゲージメント向上の効果が期待できる施策ですので、具体的なアイデアが浮かばずに困っているという場合は、ぜひ参考としてご覧ください。

1. 会社の理念やパーパスを明確にして発信・周知する

経営理念やパーパスは、企業としての存在意義や進むべき方向性、大切にしている価値観などを言語化したものです。

会社として目指すべき方向、行動や決断の基準を明確にし、それを経営トップ自らが継続的に発信して、全従業員に向けて積極的に伝えるようにすれば、一人ひとりの従業員が自分のするべきことを把握しやすくなり、不安を感じにくくなるため、離職の防止にも役立ちます。

2. 上司による部下へのサポート、マネジメントを強化する

従業員の離職を防止する対策としては、マネジメント層による部下へのサポートを強化し、社員の心理的安全性を高めるのもおすすめです。

マネジメントやサポートを強化する具体的な方法例としては、管理職にマネジメントやコーチングのスキルなどについて教育する研修、セミナーへの参加を促したり、メンター制度を導入して部下から上司に相談できる仕組みをつくるといったやり方が考えられるでしょう。

3. 従業員同士で交流する機会を設け、職場の風土づくりを行う

業界や職種を問わず、職場の人間関係にまつわる悩みや不満、またこれに伴うストレスの高まりは、離職率が上昇する主な原因の一つとなっています。

そのため、会社として上司以外の先輩や別の部署の同僚とも定期的にコミュニケーションが取れるような仕組みをつくるなど、社員同士が信頼関係を構築するサポートができれば、人間関係や職場の環境の改善につながり、離職防止にも役立つと考えられます。

また、社長も含めた取締役とも話ができる機会を提供し、縦方向でも活発にコミュニケーションが取れるような体制づくりができれば、職場全体の雰囲気を良い方向に変えていくことができるでしょう。

4. 従業員の働き方やキャリアの選択肢を拡大する仕組みを作る

先述した通り、働きやすさを維持・向上するための施策は離職防止の面でも効果を発揮します。

以下のような働きやすさを向上させるための施策を実行し、労働環境の整備を実現することも、離職防止対策の一環となるでしょう。

在宅勤務、フレックスタイム制などの柔軟な働き方を従業員の意思で選べるようにする
社内公募制度などを設け、従業員が望む形でキャリアアップしていけるようにする
その他、従業員からの声を参考に、働き方やキャリアパスの選択肢を充実させる

5. 人事評価の制度を見直し、従業員が納得しやすいものにする

働きがいを高めて離職を防止するという意味では、人事評価の制度を従業員に納得してもらえる・してもらいやすい内容になるように見直すことも非常に効果的です。

具体的には、従業員に会社が従業員を大切にしている、働きを見て適正に評価しているということが伝わるような昇進・昇給システムになるように自社の評価制度を変革していきましょう。

【事例】
JMARのエンゲージメントサーベイ導入企業様のご紹介

「日本型雇用対応のエンゲージメントサーベイ」ならJMAR

人的資本開示が義務化された現代において、人事部門はもちろん、経営の観点においても従業員エンゲージメントを調査して可視化することの重要性が非常に高まってきていると言えます。

JMARでは、海外とは異なりメンバーシップ型の雇用を主流とする日本型の労働慣行を鑑みた「日本型の従業員エンゲージメント」を調査するエンゲージメントサーベイを提供しています。

《JMARのエンゲージメントサーベイ5つの特徴》

※日本語だけでなく、さまざまな言語を用いたグローバル調査にも対応しております。

また、人事・組織領域に精通した経験豊富な研究員が、エンゲージメントサーベイで得られた結果に洞察を加え、データから導き出された課題に対して実効性の高い施策を提言するところまで、しっかりと支援いたします。

エンゲージメント強化や人的資本経営に関する悩みを抱えていて、調査から結果の分析、具体的な施策の提案までしてくれるパートナーをお探しのご担当者様は、ぜひJMARまでお問合せください!

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