特別対談【2】
人的資本経営時代におけるエンゲージメント向上のポイントについて(全5回)


3.第3ステージにステップアップするための秘訣

(弊社ウェビナー内において)エンゲージメントのステップというところで、ワン、ツー、スリーというものが出てまいりました。
第1ステップでは、まずサーベイをして状態を測定する段階で、第2段階になりますとその結果をフィードバックしていく、そして第3段階になりますとアクションにつなげていく、改善につなげていく段階ということでステップがあるというお話があり、現在は第3ステージまで来ているというお話もありました。
私どもも、かなり多くの人事部や大手企業様とコミュニケーションをとる中で、サーベイの悩みもいろいろと聞かせていただいているのですが、なかなか第3ステージまで行っている会社は多くないと思います。
今日、サーベイをやろうという会社はだいぶ増えてきましたが、背景として、人的資本について開示しなければいけないという点も影響があるかと思います。第2ステージで、所属別にフィードバック資料を作って部門長などにお返しするところもだいぶ進んできたように思います。
ただ、その先が問題といいますか、有効性向上に向けた課題になるかと思いますが、各事業部門の方は忙しいので、なかなか人事部からこれをやってくれ、あれをやってくれと言えません。部門長にお渡しして、あとはこれを見て改善してくださいというお渡しの仕方になり、第2ステージ止まりという会社さんもプライム市場の大手企業でもまだまだあると感じております。第2ステージから第3ステージにステップアップするのは非常にハードルが高いように思うのですが、そのための秘訣、どうしたらうまくいくかを教えていただけるとありがたいと思います。

岩本特任教授アクションプラットフォームという話をしましたが、どこの会社にも結構エンゲージメントを高めるのがうまいマネージャーがいらっしゃると思います。ピープルマネージメントがうまい人です。
そういった人のアクションデータを社内のイントラネットなどに蓄積していく、そして従業員エンゲージメントサーベイで出た、どういう課題に対してどういうアクションをとったらこの結果が出たというデータをたくさん蓄積し、それを社内でみんなが見られるようにしているケースがあります。
それをある意味真似をして、うちの部門はここと同じ課題を持っているからちょっとこれを試してみよう、やってみて違っていたらまた別のアクションをすることでアクションデータを貯めていくのと、社内のベストプラクティスやグッドプラクティスをちゃんとシェアすることです。それは皆さんが競争意識を持つと一生懸命やるようになったりします。 
データを蓄積することで、いつでもどこでもどんなアクションを取れば良いかの参考データがあるのがまずひとつです。もうひとつは、さらに人事が従業員エンゲージメントの研修などを実施しているケースです。悩んでいる部門のマネージャーを集めて、うまくやれている部門のマネージャーに話をしてもらい、ディスカッションするようなセッションを熱心にやっている会社もあります。必ず社内にそういったうまい人が結構いらっしゃると思うので、それから学ぶのが実はいちばん効果的なのではないかと思います。

4.現場のマネージャーが他の職場のアクションの事例から学ぶことの重要性

まさに私どもも、サーベイをした後に結果を返すだけでは生かしきれない部門長が多いため、そういった方々を集めてワークショップを実施するケースがあります。つい先日もやってきましたが、いろいろな地域の所長さんがいらして、管轄する地域だけ違うので、それぞれ、同じような悩みを抱えています。
若手の気持ちをどうしたら汲み取れるだろう、違う職種の人たちとどうコミュニケーション取っていこうかなど、いろいろ悩んでいるところを話し合い、知恵を交換するのは非常に有効だと私もしみじみと感じているところです。
その一方でいろいろなアクションプランを、私どもがサーベイを実施して、課題に対する処方箋をください、答えをくださいというケースも多くあります。参考例として他社がこのような取り組みをしていますということはお示ししたりするのですが、それもそのままやればすぐにできるものでもないですし、いろいろな職場もあります。
IT企業でテレワークが多い職場と、製造現場が多い会社ではアプローチもまったく違うと思いますので、やはり職場のマネージャーさんが色々考えて、自分の職場にあった取り組みをしていくことが重要だと考えております。

岩本特任教授あとは隣のマネージャーなどの近しい部門から学ぶのが効果的だと思います。

確かにそうですね。まったく違う会社の事例を出すと、うちには無理です、うちの部署では無理ですというケースは確かにあると思いますので、もしかしたら似たような職種で少しエリアが違うとか、営業1課、2課のようなところですと学び合えるのも非常に重要だと思います。

5.従業員エンゲージメントに対する経営トップの姿勢

第1ステージ(他のステージでも共通している事柄かもしれませんが)、第2ステージから第3ステージではやはり経営トップの姿勢や本気度も非常に重要だと思います。その辺りで何か具体的な事例はありますか。

岩本特任教授おっしゃる通りです。今、結構多いのは、役員のボーナスと従業員エンゲージメントスコアを連動させるようなもので、それがまさに経営トップが役員全員に対して、「従業員エンゲージメントは君たちの義務だ」というぐらい、制度にしてしまった会社が増えてはいます。

そこをまた統合報告書などで開示するケースも出てきていると思います。そういった点で、企業の本気度が少しずつ高まってはきているように思います。

岩本特任教授(弊社ウェビナー内において)イギリスの研究結果で、戦略的ナラティブが重要だと言ったのですが、あれはまずトップが従業員全員に腹落ちする物語を語れるかどうか、から始まるので、そもそもそこができなければなりません。
今、タウンホールミーティングなどで経営トップが各所を回るようなことをよくやられていますが、経営トップの言っていることが納得できないような話では、やはり従業員エンゲージメントは高まりません。末端の従業員まで皆が腹落ちして行動に落ちるような物語をしっかりとトップが語れているかは重要です。

人的資本経営時代だからとにかくエンゲージメントサーベイやってみよう、あるいは開示しなければいけないからサーベイをやらなければならない、という形で相談を持ち掛けられることがあります。
その際、社内の熱量と言いますか、経営層の熱量みたいなものがあまり充分ではないと、やってみて第2ステージあたりで止まっているケースもいくつか散見されます。やはりそういった事例はまだありそうですね。

岩本特任教授たくさんあります。最近実は、人事上がりの経営CEOが増えているらしいのですが、企業は人なのだという意識が高い方がトップに立つと盛んにやります。
しかし必ずしもそうではなく、特にテクノロジーの会社だと、うちはテクノロジーで儲けているのだから人がどうこうという話ではないとか、製造業だと設備をどれだけ持っているかが重要です。
もちろん人は大事だが、そちらよりもむしろ業績に影響を与える要素が他にあるという意識のトップだと、人事部門でやっておけという感じの会社が、実はまだまだたくさんあります。

従業員エンゲージメント自体が企業価値を上げるという点で、まだ腹落ちしていない経営層の方もいらっしゃるのかもしれません。

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