特別対談【4】
人的資本経営時代におけるエンゲージメント向上のポイントについて(全5回)


8.エンゲージメントサーベイのカスタマイズ

すべてのKPIがサーベイで測定できるわけではないとは思いますが、多くの社員の意識が、チャレンジしようと思っているか、キャリアが描けているか、自律的な行動をしているか、などはサーベイで測れるので、そういった要素も仮にきちんとサーベイに入れるとなると、サーベイもカスタマイズする必要が出てきますか。

岩本特任教授エンゲージメントの測定においては、いろいろな設問が増えてきてエンゲージメントサーベイを超えてきている感じがあります。

経営課題をあぶり出すそのものになってきているのですね。
私どものご支援している会社でも、ベンチマークをしたいのである程度決められた質問で実施しますが、プラスアルファで、自分たちが大事にしている指標やここはKPIにしたいという思いがある会社は、やはりそういったものを追加して測るという流れもあるように思います。

岩本特任教授ツールベンダーからすると、実は皆に同じものを使ってもらったほうが、業界標準になるのでありがたい場合があります。

人事戦略、経営戦略はおっしゃる通り、どうしても独自性が求められるところで、カスタマイズする部分も一部あったほうが、自社にとってはもしかしたら使い勝手が良いものになるのかもしれません。

9.技能職のエンゲージメントの高め方

私どものクライアント企業の多くは製造業ですが、それらの企業様からよく聞かれることについて、お伺いします。工場で働いている技能職の方が大半を占めていますが、私どもの自主調査のデータを見ても、本社勤務や営業職、研究開発のようなホワイトカラーの方に比べると、技能職の方のエンゲージメントが少し低いという結果が出ています。
ストレスチェックなどでも技能職のほうが少し低いという結果が出ていて、彼ら、彼女らのモチベーション、エンゲージメントを上げるための課題として、どうしたら良いのかを悩まれている会社からよく質問を受けます。製造業における技能職の皆様のエンゲージメントを高めるために、何かヒントがあれば教えていただけますでしょうか。

岩本特任教授何ヶ月か前に大手製造業で、リスクマネジメントの観点で人事を担当している方とお話する機会がありました。
何かというと、実は国内にある工場に若い人が入ってこないので、このまま行くとそもそも物が作れなくなります。そのリスクをしっかりと考えて対策を取るのがその人のミッションなのですが、実はそれぐらい深刻な状況になっています。おそらく製造業だけではなく、比較的インフラ系の企業に多いのですが、マイナスがないことが当たり前の業界が結構あります。
そのような人たちに、マイナスがないことがどれだけすごいことかを正確に評価してあげることが重要と思っています。例えば新幹線の掃除をする会社は、今、とても評価されています。掃除をすることは日本人的に考えれば当たり前の話なのですが、それを何のミスもなくかなりの短時間でやれることを評価して、本人たちも誇りとやりがいを持って仕事ができる、そういったことが結構重要ではないかと思います。
逆に、それをしないと人が入ってこなくなり、売り物が作れない状態になっていくことを理解した上で、しっかりと評価をしてあげることです。場合によっては給料を上げざるを得ないかもしれませんが、そのあたりがないがしろにされているのではないでしょうか。
今までは日本の企業はそこが強かったので当然のことにしていますが、これは海外から見ると実はすごいことです。そういったことを英語ではrecognitionといいますが、しっかりと評価をしてあげることが非常に重要ではないかという気がします。

インフラ系の会社ですと、厳しく育てるとか、背中を見て育ってこいというかたちですが、やはり昨今はマネージャーも若返り化させて、若手とどうコミュニケーションを取っていくかを工夫されている企業もいくつか見られます。まずは風通し良くものが言える風土ですね。そもそもハラスメント体質の現場もあります。
もちろん、安全を担っている場合などは、思ったことを言ってみて、と悠長なことを言っていられないとは思いますが、やはり日常のコミュニケーションではしっかりと意見が言える風土作りが求められていると思います。

岩本特任教授アクションの細かいところまで見ると、いろいろとやれることはあると思います。

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