2025.06.19
株式会社日本能率協会総合研究所(JMAR、代表取締役社長:譲原 正昭)は多発する品質不正を受け、製造業の上場企業の生産・製造・開発現場で働く従業員800人を対象に、品質に関する意識・経験と不正に関する調査を行いました。そこでは現場に潜む品質不正やそれを止めることへの諦めが挙げられ、経営と現場との見えない認識ギャップがうかがえる結果となりました。
第3回「従業員の品質意識」アンケート調査
※「無料レポート」を弊社研究員がご説明するウェビナーとなります。
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調査結果のポイント
現場に潜む不正が、多数存在している可能性あり
- 現場従業員の約1/3が、会社で品質不正が「あった」または「あるかもしれない」と感じている
- 内部通報を“ためらった”人が、実際の通報者の約7倍
- 品質不正の懸念を感じた従業員の半数近くが、「内部通報した」または「通報したいと思った」
- 現場従業員の約3割が、品質に関する不適切な行為(改ざん等)を目撃
- 品質不正が「あった」だけでなく「あるかもしれない」でも、不適切行為の目撃は5割超
品質に関する相談や内部通報が機能不全に
- 品質に関する相談先はあっても、そこで解決できない人も多数
- 相談先がない場合は、不適切な検査・試験や出荷の目撃がともに1割
- 品質に関する内部通報形骸化の背景に、“報復リスク”と“無力感”
品質不正が起こる組織には、“起きやすい土壌”あり
- 品質不正が「あった」または「あるかもしれない」では、組織内の信頼関係が希薄で、品質規定・基準の徹底や品質問題発生後のツメが甘く、問題再発も目立つ
調査結果についてのコメント
現場従業員に尋ねた今回の調査結果から、製造業における公表に至っていない品質不正の存在がうかがえました。品質不正が「あった」企業以外でも現場では不適切行為の目撃がある等、経営と現場の認識にズレが見られます。
また、従業員からの相談・通報もスムーズとは言い難い現状とともに、組織内の信頼関係の希薄さ、日頃の業務や問題発生への対応の仕方等、不正を生み出しやすい特徴(ニュースリリースでは一部を紹介)も確認できました。
当社では今回の回答を「現場に潜む品質不正を止められず、苦しむ従業員からのSOS」と捉えています。不正に積極的な従業員が多いとは考えにくく、日頃の業務における不適切な行為を自力では止められず、やむなく続けているケースも多いと想定されるためです。
優良企業であっても、ひとたび品質不正が公表されれば、その企業価値は大きく揺らぐ可能性があります。それを避けるためには、現場に潜む品質不正やその芽を早めに捉え、未然防止や早期停止に向けて対策を講じる必要があります。不正の存在は残念ですが、今回の結果をヒントに相談・通報機能や、背景にある土壌の改善も進めていけると考えています。
また、今回の結果を通じて、現場で働く従業員の認識も適切に捉えた上で、自社に適した対策が行われ、改善が進むことに繋がれば幸いです。その結果、多くの日本企業により良い形で品質文化が根づいていくことを期待しています。
関連調査のレポートは以下からお申し込みが可能です。
https://jmar-im.com/column_qm/
調査概要
- 調査名称
- 第3回「従業員の品質意識」アンケート調査
- 調査対象
- 製造業の上場企業で生産・製造、開発、営業のいずれかの部門に勤務する係長、一般社員 900人
※参考に営業部門100人も回収したが、分析対象は営業部門を除く800人(生産・製造、開発)
- 調査期間
- 2025年4月25日~4月28日
- 調査方法
- インターネット調査
- 企画・実施
- 株式会社日本能率協会総合研究所(JMAR)
調査結果
1.現場従業員の約1/3が、会社で品質不正が「あった」または「あるかもしれない」と感じている
- 上場企業の生産・製造や開発部門の従業員(係長、一般社員)では、勤務している会社で最近5年間に品質不正が「あった」が18.5%、さらに「発生事実はないが、実際にはあるかもしれないと思う」も15.6%に達している。つまり、現場の従業員によれば、最近5年間に発生した不正と同程度の“隠れた不正”が存在する可能性がある。
- 上記の両者をあわせると、約1/3が「品質不正が発生した、または発生懸念がある」状況となっている。

2.内部通報を“ためらった”人が、実際の通報者の約7倍
- 品質に関する内部通報を「したことがある」3%に加えて、その7倍近い20%が「通報したことはないが、思ったことはある」と回答し、両者を合わせると1/4近くに達している。
- ここから、約1/4の従業員が内部通報を考えざるを得なかった現場の窮状とともに、現場で品質不正に気づいても声を上げられず、内部通報制度が十分に機能していない現状がうかがえる。

3.品質不正の懸念を感じた従業員の半数近くが、「内部通報した」または「通報したいと思った」
- 「品質不正の発生事実はないが、実際にはあるかもしれないと思う」という人では、内部通報を「したことがある」5.6%に加えて、その7倍にあたる39.2%が「通報したことはないが、思ったことはある」と回答している。両者を合わせると、実に約45%が内部通報を検討した経験がある。
4.現場従業員の約3割が、品質に関する不適切な行為(改ざん等)を目撃
- 勤務している会社で品質に関する不適切な行為を見た経験を12項目にわたって尋ねたところ、約3割がいずれかを「見たことがある」結果となっている。見た内容は「検査データの改ざん」を筆頭に、「規定・基準外のものを出荷」「既定の方法以外で検査・試験を実施」といった意図的な行為が中心である。しかし、「意図せぬ法律違反」も2位に挙げられており、国内や海外の多様な法規制への対応に製造業が苦慮していることがうかがえる。

5.品質不正が「あった」だけでなく「あるかもしれない」でも、不適切行為の目撃は5割超
- 勤務している会社で品質に関する不適切な行為を見た人は、最近5年間に品質不正が「あった」「発生事実はないが、実際にはあるかもしれないと思う」ともに5割を超えており、後者は単なる懸念とは言い難い。
- また、品質不正は「なかった」でも約16%が見たことがあり、公表に至らぬ不正が各所に潜んでいる可能性がある。

6.品質に関する相談先はあっても、そこで解決できない人も多数
- 品質に関する不明点や困りごと、違和感等の相談先は「上司」が6割超とトップで、「同じ職場の従業員」が続く。
「相談先はない」は約14%にとどまり、約86%の人には何らかの相談先がある。
- しかし、そこで解決した人は5割強にとどまり、十分な解決に至っていない人も見られる。

7.相談先がない場合は、不適切な検査・試験や出荷の目撃がともに1割
- 「相談先がない」場合は、品質に関する「規定・規準外のものを出荷」「既定の方法以外で検査・試験を実施」を見た人がともに1割に達している。適切な相談の場の提供と対応ができれば、これらの不適切な行為に早めに対処し、不正の発生を止められる可能性がある。

8.品質に関する内部通報形骸化の背景に、“報復リスク”と“無力感”
- 前述の通り、「内部通報したことはないが、したいと思ったことはある」が2割に達しており、声を上げることを現場が諦めていることがうかがえた。
- そこで、内部通報をしやすくする方法を尋ねると、「実名でなくても通報できる仕組み」が5割近くに及び、通報者への不利益の回避が求められている。通報の評価・奨励も挙げられ、通報を嫌う職場の雰囲気がうかがえる。
- また、「第三者による適切な調査」「確実に適正な改善が行われる」等も上位に挙がり、改善への信頼感が欠如している。
- 上記の根底にある組織への不信感を減らしていくことで、不正の早期発見に繋がる可能性がある。

9.品質不正が「あった」または「あるかもしれない」では、
組織内の信頼関係が希薄で、品質規定・基準の徹底や品質問題発生後のツメが甘く、問題再発も目立つ
- 従業員の品質意識を品質不正発生状況別に見ると、品質不正が「あった」と「なかった」で、出荷前検査等、日頃の業務実施の適切さについて大きな差はない。しかし、品質不正が「あった」では「なかった」に比べて、ひっ迫時等、規定・基準が徹底されていない場面も見られる。何らかの品質問題が発生した際には、「なかった」に比べると抜本策が行われず、同じ品質問題が再発している。また、その背景にあるマネジメントや風土も低調で、組織内の信頼関係が希薄であることがうかがえる。
- また、「発生事実はないが、実際にはあるかもしれないと思う」における品質意識は、全般に品質不正が「あった」場合と同等、もしくはより低調である。
- 上記より、品質不正が「あった」だけでなく「あるかもしれない」場合も、日頃から問題が生じやすい土壌が作られていると考えられる。こうした点に注目して日頃から土壌を整えていくことが、今後の不正低減や防止に繋がる可能性がある。

第3回「従業員の品質意識」アンケート調査
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